はじめましてと言われた日

オタクただいま復活いたしました!

のぼる小寺さん

小寺さんの感想を書いていなかった。
第一印象は、「桐島」っぽいなぁ。
といっても桐島は映画は見ていなくて、小説のみの印象だけれども。

主人公はいるけれど主人公の目線ではなく
周りの人間によって主人公の像が明らかになる。
小寺さんは、ボルダリングが好きなフシギちゃん。
我々も小寺さんの「とりあえず登ってみます」という言葉通り、ボルダリングにしか興味がない女の子という印象だった。

小寺さんの家族構成も、どのような幼少期を過ごしたのかも中学生のころどんな子だったかも多くは描かれない。私たちに与えられた情報は、ラーメンが好きで中学の頃からボルダリングをしている。合唱の練習も率先として参加する真面目な子。鉛筆はナイフで削る。

それだけ。

けれど、それって本当に小寺さんのことわかってるのか。近藤くんが、ボルダリングをする小寺さんに惚れたように、目を奪われる小寺さんの姿はいつだってボルダリング姿だった。


最後のワンシーン。
賛否両論みたいだけれど、私は丁寧に繰り広げられた伏線を回収されたと思った。小寺さんだってただの人間なんだ。ネイルをしてもらったら嬉しいし、好意に対してNoと言える。園芸部が残した花が枯れていくのを可哀想と思うし、風船から手を離した子供を救いたいと思う。

自分と同じように、休日に自主練していた近藤くんを背中で感じていただろうし。もしかしたら、卓球に本気になっていく近藤くんを見ていたかもしれない。自分の大事な試合の後に、駆けつけてくれた近藤くんの「ガンバ」が力になったのかもしれない。

小寺さんは、あのとき初めて近藤くんに寄り添ったのではなくて、「寄り添いたい」と常日頃から思う恋する少女だったのかもしれない。


他己評価は難しい。
人は人のキャラクターを探す。私もずっと小寺さんをボルダリング好きのふしぎちゃんとして見ていた。でも、彼女がなぜボルダリングが好きなのか。彼女が、ほかに何が好きで、どんな家族構成で、どんな幼少期を過ごし、そして今の目標はなんなのか。
きっと近藤くんはここからもっと知りたいと思うのだろう。そして、小寺さんのことを知っていくのだろう。